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LUMINE meets ART PROJECT

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2025.05.01LUMINE meets ART

meets ART story #17

  • #INTERVIEW

すべては存在しているだけで美しい。
雑踏のある瞬間を無機質な網で再現するニューヨーク発、織晴美のライフワーク

人が行き交う街並みをカメラで切り取り、その瞬間の光景をプラスチックの網で再現するシリーズ「I am Here」。NYを拠点に活動する織晴美さんは、現地の美術大学の卒業制作で本作を初めて発表して以来、20年以上にわたりこのシリーズを制作し続けている。

「高校生の頃に出合った詩人のまど・みちおさんの、すべての存在を讃える『ぼくはここに』という詩に感動し、生まれた作品です。この世のものは何もかも、ただそこに存在しているだけで美しい。私も心からそう思っていますし、アーティストとして一生表現していきたいテーマです」

工事現場の囲いなどに使われる無機質なオレンジの網を立体的に縫うことで生まれる作品は、じっと眺めていると、まるでその人の物語が浮かび上がってくるかのよう。制作時はまず、とらえた風景に写っている人物を細部まで丁寧に観察するという織さん。すると少しずつ、その人の動きの意図や癖が見えてくるのだとか。

「その人の瞬間的なポーズから、筋肉がどんなふうに動き、何をしようとしているのかが想像できて、人は無意識のうちに動作を通して自分を表現していることがわかります。服のシワひとつにも必ず背景がある。すべてが理にかなっていて美しく、見れば見るほど愛おしく感じられます」

街の雑踏というテーマは同じでも、国や地域によって人々のカラーが異なるのも興味深い。例えば、2024年11月に開催されたルミネのアートフェア「LUMINE ART FAIR」で展示販売した作品は、東京・新宿の甲州街道沿いの歩道が舞台。

「スーツケースを持って歩く観光客の姿が目立つのですが、基本的には人々のファッションも行動もさまざま。雑多なムードがいかにも新宿らしいなと感じました」

なお、ルミネのアートフェアは、アートを買ったことがない人でも手に入れやすいことがコンセプトのひとつ。そのため、織さんもシーンを描いた作品まるごとではなく、人物を単体(2人組の場合は2人セット)で販売するという自身初の試みを行ったそう。

「アートのある暮らしがどんなものなのかは、体験してみないとわかりません。アートという既製品ではないものが空間に与える力強さ、そして、ご自身の審美眼を信じて生きる素晴らしさを、ぜひ味わってみてほしいですね」

作品イメージ

2024年11月2~4日に開催された「LUMINE ART FAIR」の会場にて。

作品イメージ

網の透け感と立体的なレイヤーが、作品に動きを生む。

作品イメージ

撮影した光景をスケッチし、それに合わせて網をカットしながら縫っていく。「この20年で裁縫の技術が上達し、より思いどおりに制作できるようになりました」と織さん。

Text: Kaori Shimura Photo: Ikuko Hirose Design: Satoko Miyakoshi Edit: Sayuri Kobayashi Planning: AERA AD section

※本記事は2025年1月27日に『AERA』に掲載された記事を再編集しております。
※情報は記事公開時点のもので、変更になることがございます。

  • LUMINE meets ART PROJECT

    LUMINE meets ART PROJECT
    アートと人々の未来の地図を描くプロジェクト。
    お客さまの日々の生活を豊かにする「アートのある毎日」を提案。
    ルミネ館内における展示や、暮らしに取り入れやすい作品を揃えたアートフェアの開催など、アートとの自由な出合いの場を創出します。