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LUMINE meets ART PROJECT

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2025.05.01LUMINE meets ART

meets ART story #18

  • #INTERVIEW

反復するモチーフが時間の流れを生み、有機的な広がりをイメージさせる。
加藤崇亮の新たなチャレンジ

独特の柔らかいタッチと色合いで描かれる加藤崇亮さんの世界からは、古きよきアメリカ映画のワンシーンのようなノスタルジックな美しさが漂う。色あせたマッチ箱や切手など昔の印刷物を集めるのが好きで、特に古道具屋や蚤の市で手に入れた海外の観光地やリゾートのポストカードを作品の題材にすることが多いそう。

「脳内旅行のようなもので、その場所から見えたであろう風景やそこにいる人たちなどを想像しながら世界を広げていきます。ポストカードって場所の宣伝も兼ねているので商業的に切り取られたイメージでもあり、どこまでが現実でどこからが虚構なのかという曖昧さも興味深くて」

今年1月に東京・浅草のMJK GALLERYで開催した個展では、空間自体をコンセプチュアルに仕立てる試みにチャレンジ。きっかけはタブレットで音楽を作るのにハマったことだったとか。

「エコーやディレイなど音を反復させるエフェクトを使って作っているときに、絵にもこういうエフェクトをかけたら面白いかも、と。ちょうど画材と手法を少し変えようと思っていたところで、タイミングもよかったですね」

完成したシリーズでは人や動物、木などのモチーフが反復。それにより、止まっているキャンバスに時間の流れが生まれ、より有機的な広がりを感じさせる作品に仕上がった。「ポール加藤」という架空の作家による作品というストーリーを設定し、着想源となった自作の音楽を会場のBGMに採用。会場全体がインスタレーション作品のような展示となった。

「展示自体をひとつのパッケージにしたかった。絵画作品はSNSでも見られるけど、会場に足を運んでみて初めてコンセプトの中に入り込んでいくという、リアルでしか味わえない体験を鑑賞者の方たちに促したかったんです」

今回は自身が趣味的に作った音楽がインスピレーション源となったけれど、例えば、時間に余裕のあるときに遊び半分で描いたスケッチが制作のヒントになることもあると加藤さん。

「リラックスしているときに自分の内側から出てくるものが、いいヒントになる。そんなことがよくあるんです。いざキャンバスに描くときも、力を抜いてどんどん自由に描いていけるようになりたい。それが今後の目標です」

作品イメージ

2012年よりクリエイティブユニット「エンライトメント」などに参加したのち、独立。時間や映写、記憶をテーマに絵画を制作。

作品イメージ

人物が反復して描かれ、止まっていた時間が動き始めたようなムードを醸し出す。

作品イメージ

2025年1月下旬に開催した「ポール加藤個展『PAST TIME PARADISE』」の会場風景。

Text: Kaori Shimura Photo: Ikuko Hirose Design: Satoko Miyakoshi Edit: Sayuri Kobayashi Planning: AERA AD section

※本記事は2025年3月18日に『AERA』に掲載された記事を再編集しております。
※情報は記事公開時点のもので、変更になることがございます。

  • LUMINE meets ART PROJECT

    LUMINE meets ART PROJECT
    アートと人々の未来の地図を描くプロジェクト。
    お客さまの日々の生活を豊かにする「アートのある毎日」を提案。
    ルミネ館内における展示や、暮らしに取り入れやすい作品を揃えたアートフェアの開催など、アートとの自由な出合いの場を創出します。