LUMINE MAGAZINE

SCROLL

LIFESTYLE

 

きょうは本屋に寄って帰ろう/Vol.21(選者:小谷実由さん)

2025.05.20

モデルであり、愛読家としても知られる小谷実由さんが、ルミネのシーズンテーマを切り口におすすめの本を紹介します。
今回は「Creative Exotica -異国の文化に想いを馳せて」。夏の気配にワクワクしつつも、年々厳しくなる暑さを思うと憂鬱にもなります。そんな気持ちを吹き飛ばすために取り入れたいのが、異国の文化の力強さ。このテーマから小谷さんが連想したのは、海外をめぐった旅のエッセイと、異国の友人同士の往復書簡をまとめた本です。まだ見ぬ風景や新しい価値観に触れ、想像することで、たくさんの力がもらえそうです。

『ももこの世界あっちこっちめぐり』著:さくらももこ(集英社)

自分の当たり前から飛び出して、ここではないどこかへ。出来れば一箇所じゃなくてあっちやこっちに。場所を変えれば自分の当たり前すら違ったものに見える。そんな体験をできるだけ多くしてみたい。異国であることでどうしてこんなにも新しい気持ちや自分にまだ出会えるんだろう。誰かの旅の話でさえ、心だけでもどこかへ飛ばしてくれるのだから、旅ってとてもとても不思議なことである。

さくらももこさんが彼女の夫と共に世界中をめぐった記録。訪れたのはヨーロッパからアメリカ、アジア、ハワイなどの濃密な半年間の日々。彼女らしいアクシデントや出会いはどこにいても訪れていたけれど、場所が変化してこそのミラクルもあったかもしれない。足を踏み入れるまでは知らなかった魅力にぐんぐんと引き込まれ、百聞は一見に如かずという言葉は、まるで旅をすることなんじゃないかと思わせてくれる。

『何卒よろしくお願いいたします』著:イ・ラン/いがらしみきお(タバブックス)

異国の友達ができたら、とてもドキドキする。直接会わなくても言葉を交わすことがどんどん簡単になっていくこの世の中を、とてもありがたく思っている。手紙でもいい、LINEでもいい、SNSだってどんな方法だっていい。少しでも自分の日常と相手の日常を交差させて、何かを感じることができたら。

韓国人アーティストであるイ・ランさんと、『ぼのぼの』の作者であり、彼女が尊敬する漫画家のいがらしみきおさん。2019年にいがらしさんのオフィスをランさんが訪れたことがきっかけで二人は何かコラボをすることに。二人が選んだ方法は「対話」。できるだけ一度にたくさんの対話をするために手紙を書いて送ることにした二人のやりとりは、往復書簡というコラボ作品となる。

やりとりが行われたのはコロナ禍。多くのことが断絶された日々の中で、生活や仕事、映画、家族、宗教など、とめどなく自然に対話が織りなされる。受け取ったお互いの言葉を大切に紐解き、自分の記憶や想いを添えて再び送り出す。どこで生まれどこで暮らしている人のことも、自分事にして受け取ることができたら、異国への想いはきっと変化していくはずだ。

小谷実由
ファッション誌やカタログ・広告を中心に、モデル業や執筆業で活躍。一方で、さまざまな作家やクリエイターたちとの企画にも取り組む。猫と純喫茶をこよなく愛する。愛称はおみゆ。著書にエッセイ集『隙間時間』(ループ舎)。J-WAVE original podcast「おみゆの好き蒐集倶楽部」のナビゲーターを務める。
https://www.instagram.com/omiyuno/


※該当書籍の取り扱いは各店舗へお問い合わせください


===================
■あわせて読みたい
>> きょうは本屋に寄って帰ろう/Vol.20(選者:木村綾子さん)

■こちらもおすすめ
>> わたしには、友達と、知らない友達がいる。

TOP